★ 流れ星の器 ★

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楠芽吹は勇者である。全体の感想

随分前にくめゆを全て読んだ私の感想を見たいと言う要望が有ったので、遅くなりましたがここで書こうと思います。

因みに2018年発売のメモリアルブックの話は未読です。
勇者の章で天の神が飛来した際の防人達の話ですよね? その内読んでみようかと思います。

「楠芽吹は勇者である」はシリーズの中の立ち位置は確かに地味です。
敵の迎撃よりも世界を救う別の方法を集団で模索する、戦闘がメインの目的ではない。と言うバトル物の中ではやる事は本編の裏方です。しかしそれこそがこの「くめゆ」のテーマでもありました。

 

 本来中学生と言うのは子供の中でも特に個人の個性が強く現れ始める時期でもあり、感情が色々揺れ動く複雑な時期で、他人の評価だって人一倍気になる事だってあります。ゆゆゆシリーズ、と言うか創作物全体に言えますが中学時代の人物に命を懸けた戦いに身を投じるって凄く複雑な心境になると思うのです。いやどんな年齢の人でもある日行き成り命懸けの戦いやれって言われて真面に出来る精神でいられるか微妙ですけど。

 私がゆゆゆシリーズに魅了された理由はどのメインキャラクターの行動も決して無駄に終わらせてない事だと思います。
正しい・正しくない関係無しに一人一人のキャラクターの立ち位置や言動には必ず何かしらの意味が有りました。

 

 第一期で壁を壊したのがかつてお役目をはたして記憶を無くした東郷さんだからこそ、彼女の絶望が理解でき、涙の理由すら解らないと言う言葉からも園子と銀の絆が厚かったかが伝わり、大赦に反旗を翻したのが風先輩だったからこそ如何に彼女が樹や部員想いだったかが理解出来ますし、最後に己の身体機能を駆けて満開を繰り返したのが最初に悪態をついてた夏凛だからこそ彼女の心境の変化と友奈達の絆が出来た証拠です。

 

 それは西暦の勇者達も同じで過酷な状況下におかれた若葉も日向も仲間達の置かれた立場や状況あってこそ大赦のあり方や勇者のメンタル管理を重要視し、それが神世紀でも伝わり、今尚もそれぞれが前を向いて先に進もうとしています。

 

 楠芽吹は自分を磨く事にあまりにもストイック過ぎる部分は有りました。しかしここまで努力出来る要因のもう一つは彼女の父親の存在です。
裏では「パパ」と呼んでると解る通り、彼女が如何に父親を愛してるのかが伺えます。
ある意味、これは彼女も普通の子供と変わらない部分の一つと伺えます。
自分よりも年下で甘えたい盛りも我慢して熱心に御役目に励む巫女である国土亜弥には敬意を払ってた芽吹ですが、
本当は芽吹自身も親に甘えたい時期もあった筈です。それを優秀である親のメンツも考えて我慢したのかなと。

 

 序盤では「大赦を見返す為」と言う題目は有った物の、ハード過ぎるゆゆゆの世界観の中で、結果としてリーダーとして誰一人仲間の死者を出さなかった芽吹の功績は非情に多きいです。芽吹は自分のストイックさを人に押し付けるなどやり過ぎな部分は有ったにせよ、亜耶の言う通り自分を磨く事には余念が無く、口で言った事をしっかり実行に移してます。

まだ芽吹が棘の強かった頃から夕海子達がそれなりに絡んで来たのは、芽吹のそう言った真っ直ぐな部分を認めてたからだと思うのです。

 

 そして芽吹はこれまでの勇者であるシリーズが築いて来た多くの歴史の影響を受けた人物でした。
嘗て没落した弥勒家の再建を夢見る夕海子、
勇者部に出会って自分の抱いてた勇者に対するイメージが覆った雀、
銀達の事は神樹館では別のクラスだったしずく・シズクにまで伝わり、
それが幾つも芽吹に伝わり彼女の変化に繋がります。

 

 「馴れ合いは甘い」等と罵倒し、あれだけ他人と粗利が合わなかった彼女が終盤では仲間を全て撤退させたった一人でバーテックスに挑み、重症だった夕海子の無事に涙して程安堵する。仲間が助かった喜びを知る程、彼女の心境は大きく変化しました。それはもうただのライバルとしか見てなかった夏凛を励ます程に。
もし仲間を本気で思えるこの気持ちが最初から持ち合わせていれば彼女も夏凛の様に勇者に選ばれた可能性は高かったでしょう。それだとくめゆが成長物語として成立しなかったかもしれません。

 

一度犯した過ちは消す事は時間改変などしない限り消せませんが、自らの過ちを認め、成長していく姿は果たして醜いでしょうか?

 

一人の人間がここまで変われただけでも、西暦の勇者や銀達には存在意義がありました。

 勇者であるシリーズは一見鬱展開ばかりに目が行きがちですが、テーマソングにある「勇気のバトン」が本作全体の本質であり、メインテーマであると私は考えています。

 

因みにここからはアプリゲーである花結いの章の感想も入ります。
ゆゆゆいでは歴代勇者全員が集まりましたが、残念ながらこの記憶は最終話でリセットしてしまいました。

花結いの章の終わり方って個人的にはあんまり好きじゃないのです。
結果的に全て神様達の手の上であり、元の時代に戻ってからの雪花や千景の今後が気がかりだからです。
とは言え、元々神樹様は寿命が近かった事もありあのゆゆゆい時空を長時間維持出来る保証ははじめから在りませんでした。
それに東郷さんや園子が銀と再会、若葉と歌野の共闘って、ゆゆゆいだからこそ出来た事でもあるんですよね。


展開事態はあまり好みではありませんが、終わり方としては前向きな方向であり、
勇者達が前向きに終わらせようとしたのにはあの場で培ってきた経験故です。

説得力のある流れでキャラクター達が決めた事だと、読み手側である私はキャラの行動の成り行きに身を任すしかありません。

 

ただこれの次の話とされる「きらめきの章」と言う物が如何なる物なのか今後注目もして来たい所です。

話がそれましたが兎に角「くめゆ」は芽吹の成長物語としては丁寧で解り易く纏まった話であると考えています。
何れ勇者の章以降で本当の意味で勇者部と手を取って前に進めると良いのですね。